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緊急対応!業務用PCが起動しない時の「まずやるべき5ステップ」

業務用PCが突然起動しない――この瞬間に失われるのは機械の稼働だけではありません。進行中の案件、帳票、設計データ、財務ファイルなど、事業継続に直結する情報資産が一時アクセス不能となります。最悪の損失を回避する鍵は初動です。本ガイドは、社内の現場担当者が「いまから」実行できる5ステップを、安全・再現性・説明責任の観点で整理しました。
ステップ0:通電停止と現状固定(最優先の安全化)

まずは通電を止めること。再起動の連打・強制電源投入・バッテリー抜き差しを繰り返すと、記録媒体の損傷や基板の二次被害を増やす原因になります。異音(カチカチ、ガリガリ)、焦げ臭、過度な発熱がある場合は、ただちに主電源をオフにし、電源ケーブルとACアダプタを外して現状を固定します。
・再起動の連打/電源ボタン長押しの連続試行
・通電したままの移動・振動/叩く・揺するなどの衝撃
・開封時の静電気対策なし作業
ステップ1:電源・表示・ビープの一次切り分け

目的
「通電反応があるか」「POSTまで進むか」を素早く判定し、電源系/表示系/内部エラーのどこで止まっているかを特定します。
やること
- ACアダプタ・コンセント系統の変更(別口/別タップ)
- 電源LED/キーボードバックライト/ファン始動の有無
- 外部ディスプレイ接続(HDMI/DP)での表示確認
- 起動時ビープの有無(ある場合は回数・長短を記録)
やってはいけないこと
- ビープが鳴るのに電源再投入を何度も繰り返す
- 画面が真っ暗なまま長時間通電を続ける
- 高負荷デバイス(VR/外付GPU箱)を挿したまま起動試行
確認観点
- LEDは点くが無表示=表示系 or メモリの可能性
- ファン高速回転のまま停止=熱/電源瞬断/基板の疑い
- BIOSロゴで止まる=周辺機器・ブート順・ストレージ
ステップ2:最小構成(メモリ・周辺)での再評価

起動しない原因の一定割合は、メモリ実装と周辺デバイスに起因します。最小構成に落として変化を観察しましょう。
やること
- 外付けUSB機器・拡張カードを一旦すべて外す
- メモリを1枚のみ(推奨:スロット規定番)にして起動
- メモリ差し替え(スロット入替)で挙動差を確認
- CMOSクリア(メーカー手順に従い実施)
確認観点
- メモリ1枚でPOST通過=モジュール or スロット不良
- USB全抜きで進む=外付けブート干渉・デバイス不整合
- CMOSクリア後のみ進む=設定・時刻ズレ・周辺初期化
ステップ3:ストレージ状態とOSブート経路の判定

BIOS/UEFIでストレージが認識されているか、ブート順やセキュアブート設定が適切かを確認します。OSの入ったドライブが不安定な場合は通電を控え、データ保全の優先度を上げます。
やること
- BIOS画面でストレージ認識有無/温度を確認
- 起動経路(UEFI/Legacy)とブート順を確認
- 外付けメディアからの起動テスト(通電安全が前提)
- RAID/NASは構成情報の変更禁止(読み取りに徹する)
やってはいけないこと
- 不安定なSSD/HDDにOS再インストールをかぶせる
- RAIDでディスク順や初期化を試す(不可逆)
- 異音を伴うHDDに長時間の通電を続ける
ステップ4:放熱・異音・基板劣化の観察

放熱不良は、起動失敗や突然のシャットダウン、性能低下の典型的な原因です。ファン異音、ヒートシンクの粉塵、熱暴走痕を確認します。電源ユニットの経年劣化や固着コンデンサも、瞬断・不安定化の要因となります。
観察ポイント
- 起動直後からの高回転・断続的なファン音
- 筐体通風口の埃詰まり/ヒートシンクの粉塵層
- 電源ユニットからの異音や焦げ臭
- 基板上の変色・膨張・漏液痕
対応の考え方
- 清掃・グリス再塗布・ファン交換で温度安定化
- 高温続くNVMeはサーマルパッド追加で安定化
- 基板異常の疑いは通電を控え、安全に評価へ
ステップ5:復旧可能性の判断とデータ保全の最終決定

ここまでの所見を踏まえ、修理を継続するか/データを最優先に保全するかを決めます。媒体ダメージの疑いがある場合は、追加通電を避ける判断が復旧率を大きく左右します。
| 観点 | 修理継続 | データ保全優先 |
|---|---|---|
| 目的 | PCを再稼働 | 必要データの確保 |
| 通電 | 前提になる | 避ける/専用設備で安全に解析 |
| 成果物 | 動作品 | 抽出データ(内容を確認のうえ納品) |
費用と納期の考え方(社内説明のための目安)

費用は「故障の重さ」「部材の有無」「作業の難易度」で決まります。宅配・出張といった手段は付随コストの差にとどまり、中心は技術工数と部材です。
| カテゴリ | 代表例 | 目安(税別) | 補足 |
|---|---|---|---|
| 軽度ソフト | OS設定/ドライバ | ¥8,000〜¥25,000 | 出張は別途エリア料・交通費あり |
| 軽度ハード | SSD/メモリ換装 | ¥15,000〜¥35,000 + 部材 | 規格世代で材料費が変動 |
| 液晶系 | パネル割れ等 | ¥20,000〜¥50,000 + パネル | 機種依存(薄型は高め) |
| 電源/基板 | 通電不可・マザボ | ¥25,000〜¥80,000 | 難易度・在庫・再現性で上下 |
| データ保全 | 論理〜中度 | ¥20,000〜(重度別) | 保全優先の工程は別管理 |
相談先の選び方

判断基準
- ヒアリング力:受付段階で想定作業と納期の射程が見えるか
- 対応範囲:Windows/Mac/Surface/自作PC、台数・オンサイト可否
- 設備・在庫:測定機器・パーツ在庫・検査治具
- 情報開示:作業方針・料金内訳・リスク説明の明確さ
- 実例/結果提示:結果提示のプロセスが整理されているか
PC Fixs(ピーシーフィックス)|秋葉原店/高田馬場店

データを残した修理を前提に工程設計。初動ヒアリングが丁寧で、診断→見積→着手の段取りが短く現場効率が高いのが特徴。宅配では精密機器に適した環境、出張では現地対応の柔軟さが評価されています。
| 受付 | 持込/宅配/出張(エリア応相談) |
|---|---|
| 料金 | 診断料金0円/作業費一律10,000円(税込11,000円) |
| 対応 | Windows/Mac/Surface/自作PC |
ドスパラ 秋葉原本店|自作・ゲーミング機材の即日修理にも対応

PCパーツの豊富な在庫と売り場導線が強み。修理とアップグレードの同時相談がしやすく、自作機やゲーミングPCの軽中度トラブルで強みを発揮します。即日部品交換にも柔軟で、スピード重視のユーザーに好評。
パソコン工房 秋葉原本店|パーツ選定から修理までワンストップ対応

学生やテレワーカーなど、幅広い層に親しまれるショップ。用途ヒアリング→提案→パーツ確保→修理までの流れがスムーズで、初めての修理相談でも迷いにくいのが特長。BTO機のアップグレード相談にも対応しています。
予防メンテナンス:次の停止を防ぐ3本柱

1) 放熱対策の徹底
- 四半期ごとの筐体清掃・フィルタ点検・グリス更新計画
- NVMeのサーマルパッド・ヒートシンク適正化
- ラック/デスク下の排熱経路確保(吸気と排気の分離)
2) 電源品質の平準化
- 無停電電源(UPS)・雷サージ対策
- 古い電源ユニットの計画更新(経年劣化の平準化)
3) データ保全の仕組み化
- 必要なデータの種類と優先度を共有し、担当範囲を明確化
- 世代別バックアップ(オフライン含む)と復旧手順の共有
- 障害時の連絡網・判断権限(通電停止の基準)を明文化
よくある質問
Q. 通電を止めるべき判断はどこですか?
A. 異音(カチカチ/ガリガリ)、焦げ臭、局所的高温のいずれかがあれば即停止が原則です。無表示でファン高回転が続く場合も停止し、以降は安全に評価します。
Q. 社内でできる切り分けの限界は?
A. ステップ2(最小構成)までが目安です。ストレージに異常の疑いがある場合、無通電で外部委託を検討してください。
Q. データ保全と修理、どちらを優先?
A. 事業継続に必要なデータがあるならデータ保全を優先。修理はその後の選択肢として検討します。
まとめ:初動の質が、復旧率と損失額を左右する

起動しないPCに対して、通電停止→一次切り分け→最小構成→ブート/媒体判定→放熱/基板観察→復旧判断の順で進めれば、不要な二次被害を避けつつ現実的な対応が可能です。社内での説明責任を果たすうえでも、所見の共有と結果のすり合わせプロセスの明確化が有効です。迷ったら早めに相談し、データを守る意思決定を。